1 概要
夏から秋への季節の移ろいを感じさせる、性格の異なる2つの美しい散開星団(および隣接する銀河)の競演です。
こぎつね座のNGC6940は、天の川のなかに大粒の星々が広がる開放的な星団で、その爽やかな存在感は夏の夜空のフィナーレを飾るにふさわしい造美を持っています。一方、ケフェウス座のNGC6939は、非常に目の詰まった上品な古典的散開星団ですが、その最大の見どころは、わずか40分(満月1個分強)の距離に、激しく星形成を繰り返す正面を向いた巨大な渦巻銀河「NGC6946(別名:花火銀河)」が寄り添っている点です。銀河系のなかの星の集まり(散開星団)と2,000万光年彼方の異銀河が同一視野でランデブーする姿は、宇宙のスケール感を肌で感じられる極上のエリアです。
項目 NGC6939 NGC6940 別名 OCL217 OCL141 分類 散開星団 散開星団 星座 ケフェウス (Cep) こぎつね (Vul) 等級 7.8 6.3 視直径 8' 31' 距離(光年) 5800 2500 赤経 / 赤緯 20h 31.4m / +60° 38’ 20h 34.6m / +28° 18’
2 位置と探しかた
NGC6940は、こぎつね座の東の端、はくちょう座の翼の先にある4等星エータ星から南東へ約3.5度進んだ天の川の中に位置しています。
NGC6939は、はるか北上したケフェウス座の足元、はくちょう座との境界付近に位置しています。ケフェウス座のエータ星(アル・キドル)のすぐ近くを目印にスキャンすると、上品な星団と、すぐ隣で淡く大きな円盤を広げる銀河(NGC6946)をセットで捉えることができます。どちらも天の川の主脈やそのすぐ傍らにあるため、大気の影響を受けにくい高い高度で迎え撃つことができます。
3 シーズンとアドバイス
見頃は、8月から10月。この時期、こぎつね座のNGC6940は天頂付近をダイナミックに通過し、ケフェウス座のNGC6939ペアは北天の非常に高い位置にホバリングするため、日本のどの地域からでも大気の影響(シーイング)を最小限に抑えた最良の条件で露出時間を稼ぐことができます。
★ 見易いシーズンは、7から10月頃
写真に最適
0時に南中
7月下旬
観望に最適
17:00 18:00 19:00 20:00 20:30 21:00 22:00 23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 に南中
★ 今夜の観測タイミング
観測夜
観測地
GPS取得済
北海道(札幌) 北海道(旭川) 青森 岩手(盛岡) 宮城(仙台) 秋田 山形 福島 茨城(水戸) 栃木(宇都宮) 群馬(前橋) 埼玉 千葉 東京 神奈川(横浜) 新潟 富山 石川(金沢) 福井 山梨(甲府) 長野 岐阜 静岡 愛知(名古屋) 三重(津) 滋賀(大津) 京都 大阪 兵庫(神戸) 奈良 和歌山 鳥取 島根(松江) 岡山 広島 山口 徳島 香川(高松) 愛媛(松山) 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄(那覇)
( 緯度 35.69,経度 139.69 )
📍GPSから取得
18
20
22
0
2
4
6
19:00
◆
18:40
23:44
5時間04分
◆南中高度 65.0°
月齢 27
(6%)
撮影・観測のコツ:
一見、地味な星団単体の対象に見えて、その実は宇宙の階層構造(銀河系内の新星集団と、遥か彼方の独立銀河)を1つのセンサーに同時に焼き付けることができる、これ以上ないほど贅沢な撮影対象です。漫然と星を写すのではなく、総露出時間をじっくりとかけてバックグラウンドの宇宙の透明感を丁寧に表現してあげることで、華やかな有名星雲たちを凌駕する、知的で重厚な世界観を描き出すことができます。
4 観測の難易度
NGC6940は全光度6.3等と明るく双眼鏡向けですが、NGC6939(全光度7.8等)と隣の銀河NGC6946(全光度8.9等)のペアは、表面輝度の低さから中から大口径の望遠鏡でじっくり対峙したい眼視から写真まで、奥の深い対象です。
眼視での見え方:
NGC6940は双眼鏡や小型望遠鏡の低倍率で覗くと、約100個近い微星が視野いっぱいにキラキラと優しく広がる、非常に見ごたえのある姿を楽しめます。一方で、北側のNGC6939は小ぶりで細かな砂粒が集まったように見え、そこから視野をわずかにずらすと、異次元の淡さを持つNGC6946銀河のぼんやりとした大きな光の雲が浮かび上がります。大口径望遠鏡を使い、この低倍率同一視野のなかで星団の鋭い点像と銀河の滑らかな面輝度の質感の違いを見比べる瞬間は、ベテラン観測者をも唸らせる深い味わいがあります。
5 天体撮影・画像処理のポイント
写真向けの対象としては、特に「NGC6939(星団)& NGC6946(銀河)」の組み合わせが、短焦点屈折から中焦点の反射望遠鏡まで絶大な人気を誇る定番のマスターピースとなっています。
王道の構図:
NGC6940単体では、400mmから600mm前後の焦点距離で、星団の広大な空間美をノートリミングで収めるのが王道です。
一方、NGC6939を狙う際は、500mmから800mm前後の焦点距離を巧みに使い、画面の右上に高密度な散開星団(NGC6939)を、左下に淡く巨大な腕を広げる渦巻銀河(NGC6946)を対角線上に配置するマルチ天体構図が至高とされています。
Glossy(艶)な画像処理の極意:
このエリア(特にケフェウス座の星団・銀河ペア)の画像処理における最大の難所は、手前を横切る天の川銀河特有の淡い暗黒星雲(分子雲のカブリ)の処理と、銀河本体の色彩の引き出し方です。
画像処理の際は、バックグラウンドのフラット処理を極限まで追い込み、星団NGC6939を構成する若い恒星たちの瑞々しいサファイアブルーを白飛びさせずに引き出すのがポイントです。同時に、隣り合う銀河の腕に点在する無数の赤いHII領域(星形成の現場)と暗黒帯のディテールをシャープに強調し、ガスが織りなすシルクのような艶やかなクラスター(光沢)を表現することで、宝石を散りばめたような星団の硬質な輝きと、どこまでも滑らかに広がる銀河の柔らかい立体感が完璧なコントラストとなって、芸術的な1枚の作品へと結実します。